壱町田湿地の様子 2024年12月20日
木々が紅葉し始めたかと思っていたら、途端に平年並みの気温となり季節は冬に。日本海側では雪や雨の日が多くなってきましたが、ここ壱町田湿地では晴天が続き、風のない陽だまりでは暖かさも感じます。湿地植物の群落は冬枯れの様相を呈し、草丈の高いものは倒れ始めています。草刈りの時期となりました。
写真は12月初旬のB湿地の様子です。ヌマガヤなどイネ科の草本類が繁茂し、イヌノハナヒゲやシンジュガヤなどは枯れて湿地表面を覆うように倒れています。このまま放っておくと、翌年この上に草が茂るようになってしまうので、冬の間に刈込んで裸地に近い状態に戻していきます。毎年この作業を繰り返し、湿地環境を維持しています。
草刈りをしていると、立ち枯れた草の間から冬越しをしている小動物が現れます。写真はツチイナゴ(バッタ科)です。茶色っぽい体色に黄白色や黒色の線が入った虫の姿は、冬枯れの草むらでは分かりにくいものです。成体で冬越しをするのに適した保護色をしています。南東からの日差しがよく入る湿地は暖かく絶好の越冬場所ですが...草刈りをさせていただきます。
こちらはクビキリギス(キリギリス科)です。クビキリギスも成体で冬越しするバッタの仲間です。体色は緑色をしていますが、褐色の個体も見かけます。この違いは成虫になるときの環境によるもののようです。草むらのような湿度の高い場所で育ったものは緑色になるようです。ちなみにこの個体はC湿地のじめじめした草むらで見つけたものです。
背の高い草の陰から姿を現すのは虫だけではありません。写真はフユノハナワラビ(ハナヤスリ科)です。秋になると葉を出し、春になると枯れてしまう多年草で、冬緑性のシダの仲間です。緑色の栄養葉をロゼット状に広げ、立ち上がり黄色くなった胞子葉からは埃のような胞子が出ていました。他の植物が勢いをなくす冬場に生長する戦略です。
同じく草木の陰から見えるようになったのがカンアオイ(ウマノスズクサ科)です。山地の林下など薄暗く湿った場所に自生する小型の多年草で、壱町田ではC湿地周辺に生育しています。ハート形に似た可愛い形の葉をしていますが、花は地味で株の基部に地面に接するように咲いています。花弁のように見えるのは3枚のがく片です。
湿地脇の雑木林で目を引くのがヤツデ(ウコギ科)の白い花です。ヤツデは主に海岸近くの山林などに自生する常緑の低木で、他の花が少ないこの時期に虫を呼んで受粉します。写真上部は雄性期の花で雄しべや花弁が目立っていますが、急に寒くなったためかやって来る虫はあまり見かけません。下の方には結実した花がいくつも見られますから、暖かかった頃にはよく虫が来ていたのでしょう。
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